気配


なにものかの 気配を感じて立ち止まると
そのたびにそれは隠れ
それからはもう
何もわからなくなる
それはいつだって狡猾に
おまえの様子を窺っては
おまえから何かを持ち帰り
おまえのなかに 影をつくる
そうして 日も夜も繰り返して
それはおまえと向き合うことのない
ただの気配としてあり
冬の冷気が窓の隙間から入りこむように
おまえをいつの間にか支配している
そして感じ取られるやいなや 素早く姿を消し
安心した頃に ふたたび動き出すのだ
時計の針の音を聞くともなく聞く
膝の上で 指が置かれるべき場所
おまえの足が 踏みしめるべき土地
そんなものに迷っているうちに また
なにものかの 気配を感じて立ち止まる
するとそれは一瞬にして崩れて
いなくなるのだ
そんな空気がそれぞれに配られ
おまえから離れると
虚空に浮かび上がって
散り切れない花びらのように
淋しそうにしている


(二〇一七年一月執筆)


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