風説


ゆっくりと、
のぼってゆくだけで
あたたかくなってゆく

まるでながれてゆくようだ
そのながれのなかにみをおいて
ただ 風がとおりすぎりのを
そのあとの かげまでもみていて

風がとおったあとには
ただ そらだけがあって
または そらがつつみこんでいる
いくつものふうけいだけがあって

ゆっくりと、
のぼってゆくから
あたたかくなっているのにきづかない

いつのまにかあたたかくなっていて
きづけばねむけをおぼえて
風がとおりすぎたあとの
くちさがないうわさだけがのこって

それらもけっきょくはわすれられて
うわさのまとになったひとと
みちばたで すれちがっても
どこかでみたかおだといぶかしむだけで

ゆっくりと、
のぼってゆくだけの
あたたかさにみをゆだねて

まるでながれてゆくようだ
風がふくように
ただの なまあたたかい
風がとおりすぎるように


(二〇一六年十二月執筆)


戻る   表紙