凶事


人がちぎれてゆくのを
見つめてはいけない
あらゆる知られることの叶わぬ歌が
それについてうたうのだが
詩人でないものは
それを気にかける必要はないのだ
人がばらばらになり
そのためにあらゆる予定が後方にずらされても
罵るだけにとどめて
悲しんではいけない
あれはただの他人
あなたが関わることのない
どうでもいいいのちなのだから
それについて思い悩むことはないのだ
そのうちに
すべてのことは
どうでもよくなる
すべては無に帰して
その上を
乾いた風が通るだけだ
禍々しい時が
足音も立てずにゆっくりと
近づいてくるのを
笑いながら迎え入れよ
自らがちぎれて
消えてゆく未来を意識せずに
今日を今日として
歩いてゆけ
そのうちに
すべては平穏になり
誰もそのことについては語らなくなる
あの人は
あのちぎれてばらばらになった人は
何だったのだろう
そう問いかけても
誰もが忘れてしまって
あの人は何でもない人だった
はじめから
いなかっただけなのだよ
そう言われて
終るだけなのだ


(二〇一六年九月執筆)


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