不可知論


私のまえで 閉じたり
開いたりするものがある

時に易しく また
時に難解なもの

そのうえで 風が止み
あるいは突然吹き出し

私はそれを見つめ また
その暇もなく見送り

それは確かに在ることが信じられているが
それの全体を見た者は 誰もいない

そのうえで そのなかで
人々は行き交っては傷つけ合い

私も そのうえに そのなかに
いたはずなのだが
それが確かなことであったのか
思い出すことが出来ない

それが開いた時
私のいのちも開き

それが閉じた時
私のいのちも同じように閉ざされ

同じような顔をした人々が
そのうえを 行き交うのを眺め

その人々が 異なる計画 異なる季節のなかで
それぞれの小ささに打ちひしがれていて

それでも訪れる ささやかな事件に
何か大きなものに包まれているように感じて

そうした(ことわり)のなかに 誰もが
次第に慣れていって

私は そのうえで そのなかで
それに似た謎のような歌を
いくつも書き記してゆく
開いては閉じる 歌の響き

そのうえを 風が立ち止まって
あるいは無関心に通り過ぎていって

あるいは一人 または多数
私のまえにあって 私のなかにあるもの

それは決して知りえないもの
知ることが許されず
それでいながら私が
すべてを賭けて知りたいと 願うもの


(二〇一六年九月執筆)


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