場所


私がどこにいるのか
誰も知らない
あなたがいまどこにいるのか
私が知らないのと
知ることを
許されていないのと
同じように

私がどこにいるのか
誰にも知られていないのならば
私は無であり 空(くう)である
それと同じことだ
私は存在していない
それと同じことだ

すべての物質は
それを観測する者がなければ
存在していないのだという
観測することによって
はじめて存在するのだと

私は確かめられていない
誰かの暖かい手が
私の腕や顔や膨れた腹に触れて
確かめることはない
私の傷のように疼き間欠泉のように時おり噴き出す興奮でさえも
その迷路のような感情
何をすることもない
無為の顎 指先 爪先
鳩の旅愁
それらもすべては
確かめられず
観測されずにあって
無のなかにあって

私がどこで何をしているのか
誰も知らない
あなたがいまどこで誰と 何をしているのか
笑っているのか
泣いているのか
激しい嗚咽のような快楽に
委ねられているのか
それらすべてを私が知らないのと
知ることを
許されていないのと
同じように

私は許されていないだろう
だから私はここに
窓から晩夏の暑い日が射しこむだけの
誰にも知られない場所に
一人でいる
一人でいることを
強いられていて

その場所は
どこにあるのか
私がいるだけの
その場所は

地図にも
どんな人の記憶にも 記されていない
私の場所
それはどこに

私がそうしてその場所で
時間から外れて浮いている間にも
あなたが
無数のあなたが
愛し
愛されて
移動してゆく

それはどこへ
私の知ることのない
何者も知ることを
許されない場所
それはどこに

私もいつかそこへ
無数のあなたと秘密を共有して
私とあなた以外の何者も
知ることを
許されない場所に
何者にも
確かめられていないうちに
私とあなただけの
無の場所へ

私とあなたが
存在しなくなる
その場所へ


(二〇一六年九月執筆)


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