草叢


私たちは草叢に立っていた
ぼんやりと立ちつくして
それぞれに
この世のことわりを眺めていた
頭上では雲がゆっくりと動いては形を変え
私たちはその様子をつぶさに追っていた
私たちは無垢であり
そのために決して傷つくことはなく
あらゆる思い出や忘れてしまいたいことも
すべては等しく
何でもないものであって
ただこの時間だけが重たくて
私たちのそばにありつづけていた
この草叢のどこかで
芽吹いた先からむしられるものがあって
それは絶え間なくつづいたが
無垢であるために私たちは動けず
それをかすかな臭気とともに感じるだけだった
この草叢に 私たちは
ただ立ちつくしているだけで
いまこの時間という暖かさのなかの
残酷さを感じ取っていた
私たちは無垢であるために強く
そのために どうしようもなく弱かった
この広い草叢のどこかでむしりつづける
それはそんな私たちの罪のなさへの
罰であるかのようにひびいた
私たちは変らずに
この暖かさのなかにいながら
雲間に隠れる日の光を掌で遮りながら
これらのものはむしられながらも
これからどんな風にそよぐのか
どんな風に連れて行かれるのかと
そんなことをぼんやりと思っていた


(二〇一六年二月執筆)


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