空に風が


ひゅうひゅうと風が鳴り
笛のように鳴りわたり
それはまるで誰かの呼吸
あるいは溜息のように深くゆっくりと吐き出され
くさめのようにいっしゅんだけ強く吹き
その風にのって旅をする
いくつもの枯葉や紙切れや
羽ばたく鳥の翼よ
あるいはそこから剥がれ落ちた羽根
ただの羽毛
そのかるさのためにひるがえり
もてあそばれて
くるくると舞って
また運ばれてゆく
もはや事物のかるさは
風によって広く世界のすみずみにまで知れ渡り
重力にしたがうよしもなく
浮き上がらされたまま
風のまにまに
ただよう小さな舟のように
あるいは人の思いというかたちのないものも
誰かにとどけたいと願う思いも
ただの物のようにさらわれて
なぶられては
また運ばれて
ひゅうひゅうと風が鳴り
笛のように鳴りひびき
それを地上から見上げる人の思いは
空にまではとどかず
誰かにとどけたいと願った
思いもとどかず
ただそのかるさのためにひるがえり
人目にさらされては
わらわれて
またもとに戻ってきて
呼気はいっしゅん溜められては
のみこまれて
それでも誰かへの
思いはのこって
空に風が
ひゅうひゅうと鳴りひびき
まるで何かの報せのように
笛のように鳴りわたり
それはこの星の肌をさすっては
おおいつくして
成層圏は
今日も晴れ


(二〇一六年五月執筆)


戻る   表紙