とりのこされて


誰もがみんな去ってしまった
それぞれの愛する人や
熱を傾けるもののために
誰もがここから去って
さんざん楽しんだ後で
笑い合いながら出て行った
俺は彼等が楽しむまえに
とりのこされることが既に決まっていた
そうしてとりのこされて
彼等の楽しみに行く背中を見送って
誰に向けてのものかわからない
片恋や嫉妬のような感情にとらわれた
日が落ちて辺りは次第に暗くなり
それと同時に気温が下がりはじめ
俺の気持ちも冷たくなっていった
それでも体の芯ではいまだに
癒されない熱いものがのこっていた
とりのこされたのは何も俺だけに限らず
その数は一人や二人ではなかったが
彼等もそれにあきらめを加えて
少しずつここから去っていった
そうして俺は二重にとりのこされ
早い夜の街路に立ち止まった
だが辺りが完全に暗闇に包まれ
そのなかに自身が含まれてしまっても
どこかになおのこる明るさがあった
とりのこされた明るさ
それに照らされるもの
――一つの孤独のような
それは周囲のどこかではなく
俺自身のなかから発せられていた
俺の体の芯にのこる熱いもの
それが発光していたのだ
愛するものに何を傾ければいいのか
いまだわからなかった俺だが
何とも奇妙な結末に
思わず笑い出しそうになった
そして俺は俺のなかにのこされた馬鹿げた明るさとともに
ようやく歩きはじめた
帰るのが遅くとも
帰るべき家はたしかにあるのだった


(二〇一六年四月執筆)


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