定刻


定まった時刻が真実を告げることはない
この時までつないで 継いで
振り落とされないように必死の思いでつかまっていて
ようやく迎えたこの時刻
それでもそれが 褒美のように
ほんとうのことを人に語ることはない
時計が時の訪れを告げても
また決められたつぎの時に向かって
責が満ちてゆくだけだ
時の細かな区切りに
振り返ることのない鳥たちが
朝という 大きな時のなかで囀る
それとともにゆっくりと
時の区切りの外側で目醒める時
それは決められることのない時
そのうしろめたい優しさのなかで
人ははじめてかくされていた
ほんとうのことを知る
定められたいのち
そのなかで訪れるそれもまた
ひとつの定められた時である
生の定刻は日々訪れるわけでもなければ
すぐに訪れたり あらかじめ
それがわかっているわけでもない
そのいつ訪れるかもわからない定刻に向かって
ひたすら満ちてゆき
あるいは欠けてゆけ
いまという時は
完全に満ち足りているわけでも
まったき欠乏とともにあるわけでもない


(二〇一六年二月執筆)


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