遠景


遠くに見える
あれはなんでしょうか
あの小さな白い点みたいなものは
空に浮かぶまるいかたちの
あれはなんでしょうか
ただ遠くに見えるだけで
それだけで何だか果てしないものに思える
そのことで宇宙とか
時の彼方だとか
そんなものさえ想像してしまう
遠くに見える
あれはなんでしょうか
あれもまた人間と同じように
ふらふらと酔っぱらったみたいに動いていて
恥ずかしそうにちらちらと明滅している
そんなふうにも見えてしまう
あれはなんでしょうか
ただ遠くに見えるだけで
それが私たちの手に届かないものとは限らないのに
私たちはなんだか異なるものを想像して
自分たちとはまるで違う
次元のものであるかのように思ってしまう
地上を歩くだけの人間たちの
悪い癖なのでしょうか
いいえ
きっとあれは何でもなくて
そんなに大したものではなくて
あれもまたこちらを
地上を見下ろしながら
遠くに見える
あれはなんだろう
あのこまごまと動いているだけの
ただ数が多いだけのものたちは
なんだろうなどと
あらぬ思いにふけっているのかもしれません
そしてそれと私たちはたがいに
遠くを見ながら
まじわることなどないかもしれない
それぞれの命運を感じながら
この星のにおいを
胸いっぱいに吸いこんでは
吐きだしているのかもしれません


(二〇一六年二月執筆)


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