眼の奥処


長すぎる夜に
ほんの少しの朝のきれはしを
しのばせておく
ばらばらになった風景が
夢のなかでぼんやりと
それでも一つに結び合おうとすると
空に向かって曲がりくねりながら伸びて
その先で開こうとする蔓性の植物が目醒める
痙攣した脚の痛みは
ありえない方角へ歩こうとし
それが土のなかに埋められた
筋違いの麻酔を活性化させる
人の心を持たない忘却は
針の速度で突進し
捻れながら
透明な映写膜に激しくぶつかる
そうしてぼろぼろに崩れ落ちるいくつもの剥片は
かろうじて風景の名残りを留めているが
それらは空気中に消え
その裏で癌細胞のように増殖をはじめる
やがて光が大挙して押し寄せ
視神経が一つに集まるところを刺激すると
その背後に白い羽が翻るのが
かすかに認められる
そして新しい
見たことのないものが眼の前に
その奥からやっと這い出てきたばかりの私たちを
笑顔で待ちかまえている
開くべきものを開き
焼きつけるべきものを焼きつけて
私たちは
その喜ばしい苦痛とともに


(二〇一六年一月執筆)


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