増殖

――二〇一六年元日

宇宙が私たちの記憶を暗誦し
それらを夢のなかで語りかける時
地上では闇のなかに光が点り
寒さとともに歩む人々は
またひとつ新しい角を曲がる

この世に生まれ落ちた瞬間から
細胞は増殖しそれによって人は成長し
人の数は増えそれによって地の密度は薄まり
星の数も増えそれによって星雲は成長し
宇宙は広がりそれによって誰もが縁遠いものとなり

私たちの間に広がるこの狭さと
それなのにますます離れてゆく淋しさと
それを知りながらなおも旺盛に
増殖する気配は止まず
数はただ増えてゆくだけで
角は曲がるためだけに無数に待ちかまえていて

またひとつ数が増えただけのように見える
寒冷化する年の初めに
昔から変らぬ祈りと誓いを私たちは立てるのだ
それらはいつの時代も変らず
増えもせず減りもせずに
私たちのなかにずっと在りつづけて


(二〇一六年一月執筆)


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